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9月1日 高校つぶし「実施対象校(案)」に対する見解を発表しました

2017.09.01

子どもたちの「学ぶ権利」を守れ!道理のない高校つぶしは撤回せよ
―府教委「実施対象校(案)」に対する見解―

 大阪府教育委員会は9月1日、府立学校条例・再編整備計画に基づく2017年度の「実施対象校(案)」を公表しました。その内容は、「3年連続して入学を志願する者が定員に満たず、志願者数の改善が見込めない」などとして、長野北高校を長野高校に、柏原東高校を八尾翠翔高校にそれぞれ「機能統合」し、長野北高校、柏原東高校の2校を、2019年度から募集停止、2021年度から廃校にするものです。「様々な意見を踏まえ11月の教育委員会会議で最終決定する」としています。
 これは、子どもたちをはじめ、保護者、地域住民など府民の願いを踏みにじり、「学ぶ権利」を侵害する高校つぶしであり、断じて容認できません。「実施対象校(案)」は、以下に見る通り、重大な問題点を持っており、ただちに撤回すべきです。
 第一に、「志願者が定員に満たない」ことを理由に公立高校をつぶすことには、何の道理もありません。そもそも、高校で学びたいと願うすべての子どもたちの「学ぶ権利」を保障するために設置されている公立高校の「定員」は、「ゆとり」があって当たり前です。とりわけ大阪では、2009年度入試で公立高校に志願者が殺到し定時制の2次募集までが定員オーバーした経験から、「セーフティーネット」として、「進学予定者数」を上回る募集が行われており、制度的に「定員に満たない学校」が生ずる仕組みとなっています。こうした下で「定員」未充足を理由に廃校にするというのは、高校つぶしありきで「学ぶ権利」を侵害する施策に他なりません。このような異常な施策は、他府県には見られません。
 さらに、今回対象とされた2校の「志願割れ数」は、長野北高校の平成28年度で「3名」、柏原東高校の平成27年度で「9名」と極めてわずかであり、両校には毎年200名を超える生徒が入学しています。数名から十数名程度の「志願割れ」を問題にして、200名もの生徒が入学する学校を廃校にすることに、合理性はありません。
 第二に、学区撤廃、進学指導特色校設置など競争を煽る施策のもと、高校の序列化、受験競争の広域化がすすみ、公立・私立を問わず各校が「生徒獲得競争」に追い立てられる状況となっています。こうした中で「定員に満たない」状況が、府の周辺部に位置する学校や、過酷な受験競争で下位に置かれた子どもたちが進学する学校に集中するのは明らかです。こうした高校を廃校にするのは、そこに居住する生徒や、経済的困難や家庭環境を背景に低学力となっている生徒、小中学校で勉強につまづいた生徒の「学ぶ権利」を奪うことに他なりません。
 とりわけ、今回対象とされた長野北高校、柏原東高校は、ともに府の南東部に位置し、これらの学校が廃校となれば、近隣に通える学校がなくなる子どもたちが多数生み出されることは、当該地域にとって極めて重大な問題です。
 また、府教委は、「学び直し」を目的としたエンパワメントスクールを新たに設置し、募集停止校が果たしてきた役割を担わせると説明していますが、エンパワメントスクールの入試が一般入試に先だつ特別入試として行われているため、志願倍率が軒並み1倍を超え不合格者が出る状況となっており、「学び直し」を保障するものとはなっていません。受験競争を激化させ、競争の下位に置かれた子どもたちを切り捨てる高校つぶしは許せません。
 第三に、再編整備計画が理由としている「府内中卒生の減少」は、実際には、2018年までは2009年のボトム(7万人)を下回らず、その後も6万5千人程度で下げ止まると推計されており、「少子化」は高校つぶしの理由になりません。一方で、府立高校の平均学級数は1学年あたり8クラスと、全国平均(1学年6クラス)を2クラスも上回る過大状況となっており、1学級あたりの定員も40人に据え置かれたままです。今求められているのは、高校つぶしではなく、「少子化」をチャンスと捉え、学校規模の縮小、少人数学級の実現など、教育条件の改善を行うことです。
 第四に、「実施対象校(案)」による高校つぶしは、生徒・卒業生、保護者、地域住民などの学校関係者、圧倒的多数の府民の願いに反するものです。
 大阪府教育委員会は、府立学校条例と再編整備計画に基づいて2014年から毎年高校つぶしを強行、すでに、2016年度からの池田北高校、咲洲高校、2017年度からの西淀川高校、2018年度からの大正高校と、4つの府立高校の廃校に向けた募集停止が決定されました。しかし、これに抗して、当該校の生徒・卒業生、保護者、地域住民などを中心に「池田北高校・咲洲高校を守る会」「西淀川高校を支える会」「大阪の高校を守る会」などが相次いで立ち上がり、3年間でのべ8万人もの反対署名が府に提出されています。卒業生や保護者からは、「中学時代不登校でこの学校しか行けないと言われて進学したが、そこで丁寧に指導してもらい大学にも進学できた。この学校があったから今の自分がある」「この学校がなくなったら弟や妹の行く学校がなくなる。最後の砦の学校をなくさないで欲しい」「息子はこの学校で大きく成長した。『魅力のない学校で定員にも満たずその学校に通うことは生徒自身の成長につながらない』という松井知事の事実を見ない無責任な発言に強い怒りを感じる」などの声が出されています。こうした府民の切実な声を無視する高校つぶしは、断じて許せません。
 府高教は、道理のない高校つぶしで子どもたちの「学ぶ権利」を侵害する再編整備計画・「実施対象校(案)」の撤回と、「3年連続定員に満たなければ再編整備」と規定している府立学校条例の抜本的見直しを強く求め、大阪の高校を守る会をはじめとした府民との共同をさらに発展させ、とりくみに全力をあげます。