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9月19日 「ミサイル発射情報に対するガイドライン」に対する見解を発表しました

2017.09.21

 大阪府教育委員会は9月15日、府立学校長・准校長に宛てて「大阪府にJアラートによるミサイル発射情報が発信された場合の対応について」の依頼文を発出しました。これは、文部科学省が9月8日付で発出した「北朝鮮による弾道ミサイル発射に係る対応について」の事務連絡(以下「事務連絡」)を受けたもので、府教委が策定した「Jアラートによるミサイル発射情報に対するガイドライン」(以下「ガイドライン」)と文科省の文書等を参考に「適切に対応」することを求めています。また、各校の「学校安全計画」「防犯防災計画」に「ガイドライン」を添付するなどの見直しを図るよう求めています。
 「ガイドライン」の内容は、①あらかじめ教職員間で確認・情報共有する事項、②Jアラートによるミサイル発射情報が発信された場合の対応、③大阪府にJアラートによるミサイル発射情報が発信された場合の府立学校の対応の3つからなっており、②については、「必要以上に不安にさせることがないよう、十分、配慮しながら」としつつ、児童生徒等に「周知を図るなど、実態に応じた安全指導を行う」と、生徒への「安全指導」を求めるものとなっています。また、①の中で、支援学校の通学バスについて「あらかじめバスの委託業者等と確認しておく」とし、「原則として」、バスを停車させ、可能な場合には児童生徒を頑丈な建物等に避難させるとしています。③では、「大阪府域に落下した場合」以外は臨時休校等の対応を行わないとしています。
 「ガイドライン」「事務連絡」は、以下に見る通り、重大な問題を持つものであり、ただちに撤回すべきです。
 第1に、この間の「Jアラートによるミサイル発射情報」は、国民の命に直接関わるような現実的な危険があるものとは言えず、それに対して過剰な対応を行うことは、いたずらに児童・生徒の不安を煽るものです。
 9月15日早朝のJアラート発信に際して、テレビ報道がNHKはじめ民報各局とも「ミサイル」一色になったことについて、上智大の水島宏明教授(ジャーナリズム論)は「実際のリスクに見合う放送になっているのか。国民の命に関わる切迫した事態が生じていたのか。今回は恐らくなかったのでは」と疑問を呈するコメントを行っています(9月16日付毎日新聞)。マスコミがこのような状況のなか、児童・生徒にとって学校や教職員の対応が大きな影響を与えることは明らかです。
 第2に、「ガイドライン」が「事務連絡」をもとに示している「ミサイル発射情報が発信された場合にとる行動」や「近くにミサイルが落下した場合にとる行動」は、安全確保のために現実的なものとは考えられません。
 万一、実際にミサイルが落下した場合を想定すれば「物陰に身を隠す」「地面に伏せて頭部を守る」などの対応で安全確保できないことは明らかです。核兵器や化学兵器が搭載されていた場合は言うまでもありません。「ガイドライン」による「安全指導」は、児童・生徒に、安心感ではなく、「ミサイル」への恐怖や不安を煽るものです。また、実際にJアラートが発信された場合、これらの行動をとること事態がパニックや事故の原因となる可能性もあります。
 第3に、今求められているのは、「ミサイル発射」への対応ではなく、「ミサイル発射させない」ための努力です。
 国際世論を無視し、核実験やミサイル発射などの挑発行為を繰り返す北朝鮮の態度は断じて容認できないものです。とりわけ核兵器開発や他国の上空を通過するミサイル発射などは絶対に許されない暴挙です。府高教は、これらの暴挙に怒りをもって抗議し、ただちに中止するよう求めるものです。
 同時に、北朝鮮の挑発行為をやめさせるために今求められているのは、制裁強化や軍事的威嚇ではなく、話し合い、外交による解決です。制裁や威嚇は事態をエスカレートさせ、偶発的な衝突から軍事対応、戦争へと発展する危険を増大させるものです。
 話し合いによる解決を求める国際世論に背を向け、アメリカとともに制裁強化をすすめながら、「ミサイル発射」への過剰対応で「北朝鮮の脅威」を煽り、有事体制づくり、「戦争する国」づくりをすすめようとする安倍政権の姿勢は、断じて許せません。

 以上のような問題を持つ「ガイドライン」「事務連絡」を児童・生徒、保護者などに「周知」するなどは、行うべきではありません。