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「評価育成システムに関するアンケート調査結果」に対する見解

2018.02.06

 府教委は、2月6日、「教職員の評価・育成システムに関するアンケート結果について」(本編 概要版 資料編)を公表しました。これに対する府高教の見解は以下の通りです。

 

「評価・育成システムに関するアンケート調査結果」について(見解)

 府教委は2月6日、「教職員の評価・育成システムに関するアンケート調査結果について」をホームページ上で公表しました。これは、教職員の評価・育成システム(=以下システム)の検証を求めてきた府高教の強い要求を反映し、昨年8月に府教委が行った、教職員対象のWebアンケートの結果をまとめたものです。しかし、府教委のアンケートは、その項目も、今回示された結果に対する分析も、極めて恣意的なものとなっており、公正・客観的な検証とはほど遠いものです。同時に、そうした制約のもとでも、アンケート結果からは、このシステムが「教職員の意欲・資質能力の向上」「教育活動をはじめとする様々な活動の充実」「組織の活性化」には、全くつながっていないことを見て取ることができます。システムは、本格実施から14年を経てなお、導入目的に一切つながらず、ますますその弊害を拡大させています。検証結果を踏まえ、「百害あって一利ない」システムをただちに撤廃することが求められています。
 アンケート結果に示されたシステムのおもな問題点は以下の通りです。

(1)システムは「意欲向上」「学校の活性化」につながらない
 アンケートは、「システム全体」についての設問で、システムが、①学校目標の共有につながっているか、②意欲・資質能力の向上につながっているか、③教育活動等の充実及び学校の活性化につながっているか、を尋ねていますが、被評価者の回答を見ると、そのすべてで、前回の調査に続いて「つながっていない」が「つながっている」を大きく上回り約7割となっています。しかも、すべての項目で、前回よりも「つながっていない」の比率が増加しています(①52.1%→66.8%、②65.3%→66.8%、③68.6%→72.5%)。システムが、導入の目的にまったくつながっていないことは明らかです。
 また、「あなたの意欲の向上・低下に最も影響すると思うものは何か」(複数回答可)に対する回答では、第1が「児童・生徒の成長」(54.6%)、第2が「職場の人間関係」(33.1%)、第3が「やりがいのある業務への従事」(31.0%)であり、システムの評価については「評価結果」(5.9%)「評価結果の給与反映」(14.9%)、「評価結果の任用への反映」(1%)など低いものとなっています。教職員は、目の前の子どもたちの成長・発達のために意欲をもって頑張るのであり、システムの評価や給料の差別支給は意欲向上にはつながらないことは明らかです。

(2)授業アンケートの評価への活用は中止すべき
 府教委は、「被評価者は、授業アンケートは授業改善に有用と認識しているが(中略)改善が必要」との分析を行っていますが、これにはまったく根拠がありません。
 「授業アンケート」についての設問は、「どのような授業改善の取組みにつなげたか」であり、肯定的な選択肢が示されているだけで、授業アンケートそのものへの意見は表明できない形式になっています。これは、前回調査時点からの最大の制度変更について、批判意見を封殺しようとするものであり、極めて恣意的で悪質な設問です。同時に、この設問では「有用と認識している」ことの根拠にならないのは明らかです。
 一方、回答では、「無回答」と「その他(自由記述)」が3割近く(28.7%)に達しており、記述回答には「授業評価というよりは子どもたちの好き嫌いが大きくかかわってきている」「厳しく子どもや保護者にも苦言を呈することができる教員が正当に評価されるのかはなはだ疑問」「評価に生徒のアンケート結果を反映することには反対」「その日の状態や気分によって左右される部分が多く、客観的な評価としてどれほどの価値があるのか分からない」などの意見が多数出されています。
 授業アンケートを「有用と認識」どころか、否定的な意見が噴出しているのが現場の実態です。恣意的な設問で事実を覆い隠そうとする府教委の姿勢は極めて不当です。現場の声に従って授業評価への活用はただちに中止すべきです。

(3)評価結果の給与反映は意欲につながらない
 「給与反映」の設問では、「意欲・資質能力の向上につながっているか」との問いに、被評価者の約6割(57.1%)が、「つながっていない」と回答しています。また、給与反映について「頑張りが報われた」「より一層頑張ろうと思った」など肯定的な回答は27.7%に過ぎません。大多数の教職員にとって、給与反映が意欲・資質能力の向上に結びついていないことは明らかです。
 また、府教委は、給与反映の制度について「現状のままで良い」が18.2ポイント増の32.4%となっていることを根拠に、「概ね理解され定着してきており現状で見直しの必要はない」などとしていますが、これは、前回調査で50.4%を占めた「給料への反映をなくす」と「その他」の選択肢が消されたことによるものです。同じ設問で、給与反映のメリハリについては、「大きくする」が2.2ポイント増の14.4%に対して「小さくする」が18.2ポイント増の24.9%となっていることからも明らかなように、給与反映を縮小する方向こそ求められています。
 給与反映については、「頑張った人とそうでない人に差を設けることは適当か」の項目で、前回に続いて「そう思う」が多数(69.5%)となっています。しかし、現在の制度は、評価結果がA=「良好」とされた人でも勤勉手当の支給割合が「82/100月」と、条例月数の「85/100」から減額される仕組みとなっており、「頑張った人が報われる」制度にはなっていません。教職員の7割以上が一時金を減額される仕組みはただちに撤回すべきです。

(4)システムで評価者と被評価者の意識の乖離が拡大
 「自己申告票」や「面談」についての設問では、評価者の8割が「役立っている」「意欲などの向上につながっている」と回答しているのに対し、被評価者では4~5割にとどまるなど、両者の意識の乖離が拡大しています。自己申告票や面談は、「目標の共有」「管理職との意思疎通」などを目的に導入されたはずですが、校長のトップダウンが強まり、数値目標が横行するなか、教職員の自主性、専門性を侵す状況となっていることが、自由記述に示されています。また、被評価者の65.8%が、面談の改善点として「今後伸ばすべき点や職務上のアドバイスの充実」を挙げているのは、現状では「伸ばすべき点や職務上のアドバイスを十分得られていない」と感じていることの表れに他なりません。
 目標の共有や管理職との意思疎通は重要ですが、数値目標や評価とは切り離すべきです。

 以上の点から、システムの矛盾は明らかです。しかし府教委は、「前回調査時より肯定的な意見が増加していることから、制度は着実に定着してきている」として、「システムに対する理解を深める取り組み」を行おうとしています。恣意的な調査・分析で、現場の実態を無視することは許されません。府高教は、検証結果に基づき、システムを撤廃し、評価結果の賃金リンク、授業アンケートの評価への活用をただちに中止することを求め、引き続き、とりくみに全力をあげます。

2018年2月6日 大阪府立高等学校教職員組合